ComoNe Program

"私たち人間は日常の中で音声言語、文字言語を用いて他者とコミュニケーションをとっているけれど、言葉が持つイメージやパワーが、自身の意図を超えて他者に渡ってしまうこと、意図に及ばす伝わらないことがある。
これは、日頃演劇に携わりながら感じるノンバーバルな交流からコミュニケーションの再発見を目的とし、国境、人種、世代を越えて改めて他者と向き合うきっかけとなることを目指すインスタレーション/パフォーマンスです。

言葉はとても厄介な存在だ。
頭を埋め尽くす。心を掻き乱す。しかし物質ではなく、質量もない。
もし言葉がただの物だったら、言葉を使わなかったら、私は他者に何が伝えられるのだろうか。"

コンビニの店頭で売られているフライドチキンに魂はあったのか――そんな疑問から、この研究・制作を開始した。現在、鶏のDNAから得られる情報（たとえば生前の性質）は、哺乳類に比べて極めて限られており、現時点で判別できる数少ない情報のひとつが「性別」なのだそうだ。
普段、鶏肉を購入して食べる際に生産地や品種を気にすることはあっても、性別について考えたことはほとんどない。それは一種の盲点だった。そこで、性別判定の結果から何かが見えてくるのではないかと考え、チキンのサンプルから性別を判定する実験を進めた。実験の過程とその結果は、ブックセットやポストカードとして展開している。
ポストカードは持ち帰りできるので、ぜひお気に入りの一枚を選んでみて下さい。

「Daily Narratives」は、「対話」をテーマにした映像作品です。スマートフォンで撮影した日常の風景を、AIツールComfyUIを使って動画に再構成し、さらにTouchDesignerでジェネレーティブなアニメーションを加えています。制作はChatGPTとの対話から始まり、デンマークの画家ヴィルヘルム・ハンマースホイ（1864年生まれ）の静かで詩的な表現にインスピレーションを受けました。AIによって再構築された日常は、私自身の風景でありながら、やがて「誰か」の日常へと変化していきます。この作品は、日々の微細な変化がどれも予測できない、最も身近な生成的体験であることを映し出しています。

"　これは、「本当に深刻な悩みほど、たやすく他者に共有できないのではないか」という問いから出発した「匿名で募集した誰かの悩みや痛み＝『秘密』を拾った石に彫刻したのち元の場所へ戻す」作品である。時代の流れとともに起こる価値観の変化、SFにおけるコールドスリープ(長い年月を越えるために生体を低温状態で保存する技術)などから着想し、長期記録メディアとしての石を用いて、未来で再発見されるかもしれない「秘密」が時を越えて新たな他者と共有されることを期待している。
　石が再発見される未来では、これらは相変わらず秘密のままかもしれないし、 今とは全く異なる価値観のもとで受け止められ共感されるかもしれない。そうした可能性が、現在秘密を抱える人々のささやかな希望になることを願う。"

"あり得るかもしれない架空の信仰「バーチャル供養講」を体験する作品。タイトルの「講」は、今で言うサークルのようなもの。制作にあたり青森でリサーチを行い、「見えないものとの繋がりを感じるデザイン」である信仰や、かつて村社会でコミュニケーションツールとして活用された民話の役割ついて調べ、アルゴリズムや疫病によって人々の分断が深まる時代へ応用する方法を模索した。本講では、自分の思い出の品を３Dデータにしてお堂に奉納し他の人の奉納物について話を聞き供養する他、思い出の品のペーパークラフトを作ったり、思い出の品データをダウンロードし活用し輪廻転生を促すことで、ご利益を得られる（と言われている）。不思議なことに、物理では誰も引き取らないような品も、データでは300回以上ダウンロードされる人気アイテムになることがある。
以下クレジット＿＿＿＿＿＿＿＿＿
協力：青森公立大学 国際芸術センター青森ペーパークラフトデザイン，紙面デザイン：関真奈美制作協力：tadahi，萩原俊矢，井上祐希リサーチ協力：川倉賽の河原地蔵尊，西の高野山 弘法寺，青森県立自然ふれあいセンター，思い出の品をご提供いただいた皆様https://sesseee.se/VMA/"

熱触療法は、私と鑑賞者とが一対一で行う、熱と接触による関係構築のリハビリテーションである。私達は熱せられた液体パラフィンを間に置き、並んで座る。 手を握り合わせてパラフィンに浸し、持ち上げる動作を繰り返す。パラフィンは次第に分厚い膜となり、手の境界が覆われる。と同時に、触覚的な自他の境界も曖昧になる。 皮膚感覚が溶解し、脈が誰のものかわからなくなる。冷えたパラフィンから手を抜くと、関係構築の痕跡が形として残る。 現代において忌避される熱と接触によって私たちは、再び (Re) 適合 (Habilis) する。

　心の声を聞くことは様々な個人の諸問題をクリアにしていく一助になると思います。本プロジェクトは、個々人が内省するきっかけ作りになるようなことができないか、さらに、心のうちにある「心の穴」（満たされない思いなど）さえも面白がってみることができないか、その思いで始まりました。軸となるものは、二人で協力して遊ぶ一枚の布のゲームです。複数の穴が空いている布の端をそれぞれが持ち、ボールを転がしてその穴に入れていくという遊びです。意匠の違いによるシリーズ作品としての発表と、ワークショップでの展開を行っています。協力してボールを穴に入れるという目的を達成する過程には、触れる布と相手の小さな機微に意識を向け、相手の動きに合わせてバランスをとるという寄り添う態度が生まれます。この言葉ではないコミュニケーションの体験は“共にここにいる”という感覚も得られ、心のケアの観点においても役立つものになることを期待しています。

MYMORIは、自然由来の菌糸体を使って「育てて遊ぶ」体験ができる、子ども向けのバイオものづくりキットです。
砕いた菌糸材に小麦粉を混ぜ、型に入れて育てると、約1週間で白く育ち、おもちゃの形になります。できあがったMYMORIブロックは、積み重ねてバランスゲームをしたり、絵を描いてキャラクターに見立てたりと、遊び方は自由自在。
触感や香り、見た目など五感を通じて自然とのつながりを感じながら、観察や遊びを通して環境意識や感受性を育みます。
MYMORIは、普段触れることの少ない「バイオ素材」を、家庭でも気軽に体験できる形にしました。
楽しみながら素材を育てるプロセスは、子どもたちに能動的なものづくりの楽しさと、持続可能な未来への関心を育むきっかけになります。

MagneSwift（マグネスイフト）は、電気をまったく使わずに、かいた絵や文字をでこぼこのかたちで見せてくれる装置です。先に磁石がついたペンでマグネットシートに絵や文字をかくと、その情報がシートに記憶されます。次にハンドルを回すと、シートがベルトコンベアのように動き、たくさんのピンの下に送られます。すると磁石のちからでピンが上下に動き、かたちがうかび上がるというしくみです。自由に絵をかいたり、前の人の図形に書き足したり、かく人とハンドルを回す人で役割を分けたりしながら、みんなでいっしょに楽しめる体験になればうれしいです。

「Handmade Blockchain」はブロックチェーンの仕組みを自分の手で擬似的に体験することができるアプリです。参加者は自身のスマートフォンでハンドメイドのブロックチェーンを実際に動かし、会期開始から終了までの全ての取引とブロックを各参加者の端末に保存します。取引データを参加者自身の手で検証して追加していくことによってこのブロックチェーンの正しさは保たれます。ブロックチェーンは大きなイノベーションではあるものの、ブラックボックス＝よくわからないものと捉えてしまうと、どんな活用ができるのか想像しにくいものになってしまいます。この作品ではブロックチェーンの実際の仕組みに近い体験を通じて、より直感的に仕組みの理解やその美しさを感じてもらうことを目的としています。